卒業する皆さんへ-LGBTだからと言って社会を恐れる必要はない

セクシュアリティ
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どうも、英司です。
すっかり春らしくなって来て、そろそろお花見や行楽のシーズンが到来しますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。

今日は、この卒業シーズンらしいテーマで。

すみません、少し毒を吐きます

以前、LGBTの就活についてのエントリを書いたことがありました。

就活なんて怖くない!若いゲイの皆さんへ
段々と秋も深まって来た最近ですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。筆者は芸術の秋ということで、美術館めぐりを…なんてカッコイイことを書きたいのですが、実際には食欲の秋全開で、さすがにこれだけ食べていたらヤバイということでジムに行く回数を増...

こちらはなかなかの反響でしたので、その続編というか、関連した話題としてこちらのエントリを書きます。

「LGBTマーケット」という言葉が声高に叫ばれ始めて久しい昨今。数年前は「LGBTは高学歴の富裕層が多く、購買力が高く、仕事もできて、LGBTを無視すると日本企業は見捨てられまっせ」みたいなイメージ戦略を某大手広告代理店がせっせと行っていました。

東洋経済新報社のLGBT特集にはもうウンザリ
どうも、英司です。他者の記事に対する評論や批判はあまりこのブログの趣旨に合わないとはわかっていつつも、少し今回だけはお許しくださいませ。 東洋経済新報社のLGBT特集にはもうウンザリ 最近LGBT市場を狙ってなのか、経済...

しかしそれらは見事に不発に終わり、最近は「LGBTは貧困で生活に困っていて、差別によって就職もできない」ということになったらしいですね。

なんとまぁ、私も知らないうちにLGBTって「富裕層」から「貧困層」に転落したらしく、「エリート」が「就業困難者」にひとっ飛びしたらしいのですが、その理屈を素直に受け取ると「この6年間でLGBTの人権ってものすごく後退してません?」なんて思っていたら、6年前と同じ顔ぶれの人たちが「私たちのおかげで日本は暮らしやすくなっただろ!」なんて言っているので、別に昔から安定して富裕層でもエリートでもなく、かと言って貧困層でも就職困難者でもない一介のホモの私からすると、もう何がなんやら…と言った感じです(苦笑)

まぁ、嫌味はここまでにして…。(毒吐きは以上です)

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LGBTにとっての「仕事」と「セクシュアリティ」

最近はLGBTの求職者をターゲットとした人材ビジネスが盛んです。
そうしたビジネスをしている人たち曰く、企業はLGBTに対する差別に満ちた場所で、LGBTは特別な保護や配慮が必要な存在、ということらしいのですが…。

確かにトランスジェンダーの方に関しては、「仕事」と「セクシュアリティ」は差し迫った問題であることは理解しています。

トイレの使用の問題や、見た目の性別と戸籍の性別が一致しないことに後ろめたさを感じ、年金手帳等の公的書類の提出が必須となる正規雇用に二の足を踏んでしまうという事例も見聞きします。こうした問題は「セクシュアリティ」がそのまま「就労困難」、さらに踏み込めば「貧困」の問題に直結してしまうため、人権問題として扱われるべきものだと理解しています。

ただ、LGBに関してはあまり関係のある話ではありません。私も就活が始まる頃や、学生から社会人になるときはとても不安でした。学生時代は比較的学校ではゲイであることをオープンにしていたので、今後、セクシュアリティを隠しながらうまくやっていけるだろうか?なんて心配もしていました。

しかし、実際に就活が始まってしまうと、考えていたことのほとんどは杞憂だったことに気付きます。エントリーシートや面接で聞かれることと言えば、志望動機や大学で勉強している内容、学生時代に頑張ってきたこと(主にサークル活動のことやアルバイトのこと)、趣味や特技と言ったことばかりで、冷静に考えればわざわざセクシュアリティを明かすような「必要性」がありませんでした。(もちろん詮索されるような心配もありません)

これは会社に入ってからも一緒で、私も他の人たちも、仕事をしている時はある意味「公の自分」としての顔で振る舞っています。男性が好きか、女性が好きかと言ったことは、ある意味非常に「私的なこと」ですので、「みんなが公の自分として振る舞う会社という場所」では、別に「隠している」という感覚はほぼなく、「そういう話になるきっかけがない」と言った感覚に近かったように思います(なぜ過去形かと言うと、今はオープンだからです)。

学生の頃は、毎日学校で会うような周囲の友達がみんな私をゲイだと知っている状態ですので、ある意味、毎日自分を「ゲイである」と無意識的に確認することになります。一方、社会人として働き出すと、「自分をゲイであると確認する機会そのもの」がものすごく減りました。

毎日顔を合わせている会社の人とは、そもそもセクシュアリティのような私的な領域をさらけ出すような話にはなりませんし、会社でオープンにし始めた後も、仕事の時間中は私が男を好きだろうと女を好きだろうと仕事には一切関係のない話なので、周囲が特段それを話題にすることもありません。

先にも言いましたが、仕事をする上で自分のセクシュアリティについて「本当のことが言えなくて辛い」という感覚は一切なく、それどころか「特段隠しているという感覚すらない」という感じに近かったです。

学生よりも社会人の方がメリットはたくさんある

昨今、LGBT専用の人材ビジネス企業が「就労が困難なLGBT」と言ったイメージを流布しているため、この春から社会に出る予定のLGBTの学生さんなんかで、不安になっている方もいらっしゃるんじゃないかと思い、このエントリを書きました。

しかし前述の通り、あくまで私の体験的な感覚ですが、恐れる必要は一切ないと思います。

私が社会人になってすごく感じたのは、社会人はとても自由であるということです。私の場合社会人になったとほぼ同時に実家を出たので、まず物理的に親の目がなくなり、終電まで飲み歩いて帰るときの気まずさや、朝帰りの後ろめたさみたいなものから解放されました(笑)

それは軽い「自由」ですが、もっと実のある自由としては、自分の選択や意志を最優先できる、という点が、学生から社会人になった時の一番の違いだと思いました。

例えば転職。

私は何度か転職の経験があります。この「転職」という選択肢が存在するのって、実は精神的にすごくラクなんです。

学生時代は、義務教育を終えても一応は親に扶養してもらっていた身です。いくら嫌でも、自分に合っていなくても、学校を辞めるという選択は自分一人でおいそれとできるものではありませんでした。しかし、仕事はコレと違います。どうしても辛ければ辞めれば良いし、それを止める権利は誰にもありません。

私は若い頃、リーマンショックを機に失業してしまい、3ヶ月間プー太郎をした時がありました。それまでの人生、浪人も留年も退学も不登校も経験したことがなかったため、なんだかすごく「レールから外れてしまった感」を味わったのを覚えていますが、同時に「世間で言われる、いわゆる『順調で失敗のない人生』から脱線してしまっても、案外生きていけるじゃん」なんて思い、むしろ「日本の社会は一度失敗したら転落するのみ!」なんていう、どこかで聞いた強迫観念から解放されて、あの経験以来人生観に変化が訪れ、随分とラクに生きていけるようになったと回想します。

あれから、見てくれや聞こえが良いキャリア(有名な会社に勤めているとか、カッコイイ肩書をもらう等)なんかより、自分が「これで食べて行きたい」と思える仕事にしっかり出会って、それをちゃんと習熟し、上達していく、ということに重きを置くような人生観や仕事観に変わっていったと思います。

社会人に認められた特権って、こうやって「自分の生き方は自分で決められる」ことだと思います。

この特権は、何者にも代えがたいものだと私は思います。学生時代の自由さとは比較にならないですし、その中でセクシュアリティ云々というのは、ほんの一部の、とりとめもないことでした。

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敢えて言いますが…

敢えて言わせていただくと、私の社会人生活にとって、セクシュアリティというのはすごく「小さなこと」でした。いや、「小さなこと」というよりは、「学生から社会人になる」という変化が引き起こすパラダイムシフトの規模があまりに大きすぎるため、相対的に小さく感じるというのが正確な表現かもしれません。

大人の社会は学生の頃と違ってものすごく多様です。いろんな経歴を持った、いろんな生き方をしてきた、いろんな世代の人と仕事をしたり一杯飲み交わしたりする機会がたくさんあります。私もこれまで、そういった人たちと相互に影響しあいながら、少しずつ自分の価値観や生き方を形成してきたと思います。

その中で、少なくとも一介のゲイである私が、セクシュアリティがその足かせになったという経験はありませんでした。

全員が自分と同じ価値観で生きているとは思いません。ただ、この学生から社会人になることで訪れるパラダイムシフトというのは、概ね「楽しいもの」だと私は思います。

だからもし、社会人になったら自分のセクシュアリティが原因で、会社で何か辛い思いをするのではないか?という心配をしている人がいたら、「それよりももっと楽しい変化が待っているよ」と言いたいと思います。

当たり前のことですが、自分がゲイであること、というのは、自分という人間を形成する様々な基本属性のひとつでしかないんですよね。

私も、あまりお手本になるような生き方をしてきた大人ではないですが、今から社会に出る、不安を抱える若い方の参考に少しでもなればと思います。

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